「FMきらら」(山口県宇部市)編

4月 10, 2020 shuzai

「FMきらら」(山口県宇部市)編

山口県宇部市のコミュニティFM放送局「FMきらら」を訪れました(2020/2/25訪問)。周波数80.4MHz、設立当初のコミュニティFM放送局開局順位は154位です。

宇部市の人口は、2019年末時点で約16万4千人。この規模でも、山口県の中では、下関市、山口市に続く3番目の大きなまちです。地方の中核都市といった感じでしょうか。

宇部興産や宇部セメントといった巨大なインフラ企業がありますし、なんといっても世界に冠たるユニクロ発祥の地としても有名です。山口宇部空港にはビジネスマンがいっぱい、UBEビエンナーレという野外彫刻展もよく知られています。

政治的には、現在首相の安倍晋三氏の選挙区の隣で圧倒的な自民党王国、2019年の県議会選挙宇部選挙区ではなんと無投票という有り様です。かつての長州の一角ですから、革新から保守へと時代と共に移り変わった土地柄なんでしょうね。

 「FMきらら」のスタジオがあるのは、そんな宇部市の新天町ハミングロードというアーケード商店街の出入り口でした。白地にカラフルな色が見えるところがスタジオ兼本社です。

 大きな商店街のようですが、アーケードを入ると・・・

 元気そうに開店している店もありますが、典型的なシャッター商店街です。宇部市は、残念なことに地元の百貨店井筒屋が2019年に閉店していまいましたが、その店舗もこの商店街の一本横の大通りにありました。交差点を挟んだ斜め向こうには市役所もあって決して悪い立地ではありません。現在の日本の典型的な地方都市といったところでしょう。

建物の入居店舗を見ると一階が「エフエムきらら」、二階が市民活動センター、3Fが「山口宇部経済新聞」制作企業と、まちを元気にしようとする会社が集まっている感じがします。

 アーケードを進んでも、空き店舗への市民活動やNPO系のサポートセンターの入居が目立っていました。市役所に近いということで活動しやすいんでしょうね。

 前口上が長くなりましたが、出迎えて頂いたのは社長の井上悟さんです。

 井上社長は、この業界では有名人です。なぜかというと、儲かる業態ではないとされていたコミュニティFM放送局を開局以来ずっと黒字経営され、そのノウハウを各地に伝道し、開局支援のコンサルタントまでされている方だからです。元々マーケティングを専門にされていて、地域活性化策の一つとしてコミュニティFM放送にかかわるようになったそうです。

 そんなノウハウがつまった本をもう4冊も出されています。ちょっと紹介。

 青い表紙のものは『成功するコミュニティ放送局Ⅱ』(2014)。Ⅱとあって、2007年に山口大学で防災研究をされている三浦先生と共著で出された本の改訂版となってます。井上社長がおっしゃるには、これがボリュームありすぎで、しっかり読んでもらえないということで、次に、すっごく薄い『コミュニティFM放送局を開局して失敗する前に読む本』(2017)を出されました。これはまた薄すぎたということで、白地に青文字の最新刊『コミュニティ放送の未来』(2019)は、ベストボリュームの120ページほどにした、と。

すべて東洋図書出版です。それまでの厚いのも薄いのも、私はもちろん読ませてもらってました。最新刊は、読んでいなかったのですが、いただきました! ありがとうございました<(_ _)>。

 「FMきらら」の開局は、2002年。2001年に行われた「山口きらら博」というJAPAN EXPO(博覧会)でのイベント放送局がきっかけということです。放送エリアは、宇部市を起点とした隣接する山陽小野田市と山口市の一部を含み、30万人が聴取対象。とはいえ、やはり地域は宇部が中心なので、宇部市のコミュニティFM放送局といえるでしょう。井上社長が強調されるのは、コミュニティFM放送局はあくまでもどこまでも地域を元気にするための地域メディアだという視点でした。

 この局の特徴は、なんといっても朝7時から夜22時までの録音編集無しのオール生放送という点でしょうか。主に契約パーソナリティ15名で、生放送しているそうです。番組表を見てもらえばわかりますが、冠番組はそう目立たず、月から金の帯枠が多いですね。

最新版はこちらで FMきららHP番組表 https://kirara804.com/program.php

FMきららはオールディレクター主義を取っており、パーソナリティ、アシスタント、リポート中継、ミキサー、営業のすべてをそれぞれ一人一人がやります。専任などいらないという考えです。また、15時間すべてが生放送である理由は、緊急放送や行政情報また不審者情報や迷子捜索などにも臨機応変に対応でき、「地域のコミュニティを成立させる」ものだと言われていました。その通りだと思います。

 取材時には女性パーソナリティが1人でやっている時間帯で、おしゃべりしながら、ミキサー卓操作して、音楽をかけるといったオールマイティな活躍。写真では、ミキサーの前で1人マイクに向かっていますが、複数の場合は、ガラスの向こうがマイクスタジオ・スペース、手前がミキサー・スペースとなります。さらに向こうに見えるのは道ですから、いつも公開生放送ということですね。

 マイクスタジオ・スペースから見ると、ミキサー室はすごく近いです。外に見える建物は大通りを挟んだ市役所ですね。

 こちらの部屋からはスタジオを間近で見学できるようになっています。いいスペースですね。変な言い方かもしれませんが、全体的にすごくラジオ局のスタジオっぽいです。井上社長は、ちゃんとスタジオを作ることは大事だから、しっかりそれっぽくこだわったとおっしゃってました。

ということで、この局は、自主番組100%で運営されており、音楽チャンネルによる再送信や他局番組の放送はいっさい無し。またサイマル放送やネット配信といったこともしていません。これは、コミュニティFM放送局はあくまでも地域メディアだから、と強調されていることの裏返しです。聴いてもらうべき相手は遠くではなくすぐそこにしかいない、ということですね。

こうした「地域のコミュニティを成立させる」と強調される視点は、地域からのあるいは地域ならではの広告協賛という営業成績としても返ってくるようです。スタジオのテーブルの上に置いてある冊子が見えますか? これ「Club Kiraraマガジン」という冊子です。

最新刊のVol.64の中を開くとこんな感じ。

 これは、FMきららが、まちを元気にするために独自に展開している「クラブきらら」という会員システムの情報誌「Club Kiraraマガジン」」です。

クラブきららというのは、市民と、地元で頑張っているお店や事業者とを結ぶシステムで、

この会員には、中学生以上なら誰でも、入会金、年会費無料で入会できます。入会するとメンバーズカードが発行されます。一方で、地元のお店や事業者は、月額1万円で加盟店になります。加盟店それぞれは、特典(10%OFFとか、アフタードリンクが無料とか)を設定し、会員は加盟店で、会員カードを提示するとその特典が受けられるというシステムです。

加盟店がどこで、どんな特典があるのかを知らせるのが、季刊で3万部発行する、この「Club Kiraraマガジン」なのです。会員は、現在1万6千人。加盟店にとっては、見込み客が1万6千人いるということです。

加盟店になると、毎週1回、FMきららのラジオ放送で60秒程度の生CMが放送されるうえ、ラジオカーがリポートに来てくれます。地方都市では、ラジオやテレビの広告を出したことがないお店や事業者がほとんどなので、マガジンとのメディアミックスによって、広告主を増やしているそうです。

「クラブきらら」の加盟店は100以上ありますから、年間、1200万円以上の売り上げが上がります。またCMスポットは、20秒、1本500円と安価で、小さなお店や会社でも出稿できるように設定されています。また、専ら提供スポンサーの情報を発信するオリジナル番組は、例えば司法書士さんが提供につき、その司法書士の先生が番組に出演し、パーソナリティと一緒に番組を進行し、放送を通じてリスナーさんとの人間関係を構築し、ビジネスをスムーズに進め、好結果を出しているそうです。こうした番組も、54分番組で月額3万5千円でできるとのこと。

こうした単価は同業者には安すぎると言われるようです。けれども井上社長に言わせれば、これはマーケティングをした結果から導き出した数字で、これでいいんだと。だって、地域の小さなお店が他の販促費を使いながら、広告出稿という形でもコミュニティFMに参加して、地域の活性化に協力したりして、まちの一員であることを感じてもらうには、これなら出せるよという金額じゃないとダメ。生意気を言うようだが、こんな超密着の地域広告を出しても効果が出ないようでは、そもそも、そのお店はダメなんです、と。おっしゃる通りです。

広告料金が安すぎるから儲かってないでしょ、と思われるかもしれません。そもそも儲かる業態ではありませんが、年間売り上げは7千万円から8千万円あるそうで、ずっと黒字。だからテレビでも紹介されたりしています(『TBS・がっちりマンデー』)。

社員は1名、役員2名、そして契約パーソナリティ15名ほどで運営しているということでした。黒字分は、通常の報酬の他に、夏、冬、期末の3回ボーナスを出しているということでした。

局自体はけっして広いスペースがあるわけではありませんが、十分な広さがありました。CDがところ狭しと並んでいる部屋で、パーソナリティの方が、次の番組の準備などをしていらっしゃいました。

現地写真

最初の立ち上げ時に募った株主は、170名ほどになったそうです。そのうち5万円の1株株主が130名ほど、あと40名ほどが複数数株主。立ち上げメンバーは1人60株の300万を出して総額4000万円の出資金から始めたとのこと。この株主のお話の注目点の一つは10%以上の大株主を置かないようにしたという点。もう一つ、一株株主の市民の方が100名以上もいる点です。コミュニティ放送局は、市民の放送局ですから、大勢の市民の関心と支え、これが大事なんですね。

 「FMきらら」と井上社長は、とても素晴らしい成功事例で、とても良いケーススタディでした。だって、この局の成功後、井上社長のコンサルタンティングでたくさんの局が誕生していますし、井上社長はそのためのコンサルティングの会社も立ち上げておられますから。その支援会社のホームページを見ると開局支援局がずらっと並んでいます。「ダメな局には原因がある。ノウハウ通りにすればうまくいくよ、私はうまくいって欲しいから、地域のメディアが出来て欲しいから助言してるんだよ。」わたしたちにも必要があればコンサルティングしてくださるとのお言葉もいただきました。力強いお言葉です。ありがとうございました。

FMきららオフィシャルHP  https://kirara804.com/

コミュニティメディア開発推進機構HP http://www.cmkikou.jp/

コミュニティFM放送アライアンス https://www.cfma.club/

TBS『がっちりマンデー』特集「儲かる!地域メディア」2015年2月15日放送

https://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/2015/0215.html

文責:伊藤明己

写真:伊藤明己

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