「世田谷FM」(東京都世田谷区)編

9月18日 「エフエム世田谷(東京都世田谷区)訪問記」

今回は東京都世田谷区にあるコミュニティFM局「エフエム世田谷」に訪問しました。(2020/9/18訪問)

周波数は、83.4MHZ。都内で9番目、全国では106番目に開局されました。

世田谷区といえば、成城や二子玉川など、芸能人・文化人・富裕層が多くとても品が良いイメージがあります。局に向かう途中、高級感のある住宅などを見て思いました。エフエム世田谷の事務所は、首都高速の用賀インターチェンジ沿いにあり、エコプラザ用賀という公共施設の2階にあります。用賀駅からも徒歩4分とアクセス抜群でした。近くには砧公園や世田谷美術館もあり、緑も多く、のんびりと落ち着ける雰囲気で心地が良かったです。今回はエフエム世田谷担当課長の小林さんから様々なお話を伺いました。

エフエム世田谷 エコプラザ用賀 正門

エフエム世田谷は、世田谷区の第3セクターである「株式会社エフエム世田谷」により、平成10年7月から放送しています。開局のきっかけは阪神淡路大震災で、全国的に地域防災力の強化・向上が叫ばれるなか、世田谷区にもコミュニティ放送局が必要という機運が高まり、2年の準備期間を経て開局に至ったとのことです。

エフエム世田谷は、世田谷区の防災ラジオとして、地震や台風などの災害時に活用してもらうためには、平時からも多くの人に聴いてもらわなければならないということで、芸能人や文化人をパーソナリティとした放送を行っていました。リーマンショックによる景気後退の影響もあり、大手スポンサーの脱落など営業収支は非常に厳しかったようです。結果、平成24年に、同じく世田谷区の第3セクターである「株式会社世田谷サービス公社」と経営統合し、現在に至ります。ちなみに世田谷サービス公社は、世田谷区内の公共施設(区民センター・公園・北沢タウンホール・成城ホールなど)の維持管理や、世田谷区役所の電算システムのサポート等を行っている会社です。

世田谷サービス公社全体の従業員数は約960人です。そのうち、エフエム世田谷のスタッフは9人(正社員:3人・契約社員:6人)です。多くのコミュニティ放送局が社員1、2人で残りはアルバイトという構成らしく、月給者が多いエフエム世田谷は、とても雇用が安定しているといえます。

放送体制です。エフエム世田谷は24時間365日放送を行っています。月曜から土曜の日中はスタッフが常駐しており、スタッフが不在となる夜間・早朝や日曜日に、大地震や気象警報など緊急事態が発生したときは、当番制で自宅から電話による割り込み放送を行います。

開局時からワンマン放送は行っていません。生放送はディレクター、パーソナリティ(+アシスタント)の体制で放送しています。

番組の構成です。放送されている番組の約6割がエフエム世田谷の自主制作で、残りの4割はミュージックバード(全国のコミュニティFM局に向けた番組制作・配信を行っている企業)からの配信番組です。コミュニティ放送局のガイドラインでは、60%以上の自主制作番組の放送が求められています。

ミュージックバードから配信を受けている理由は、少ない人数で体力的にも厳しく、世田谷サービス公社の人事異動もあり、ラジオだけを手掛けるスペシャリストを育て上げられない実情があるとのことです。

収支状況です。FM放送事業として、年間9500万円前後の収入があり、内訳は世田谷区役所から55%、一般企業が45%です。しかし、出演者やディレクターへの報償費や、事務所の家賃、放送機器の減価償却費、アンテナや送信機の施設使用などの経費があり、約1000万円の赤字が出ています。株式会社世田谷サービス公社全体の収支は黒字となっていること、エフエムの赤字は年々減少していること、世田谷区には防災ラジオが必要だということで、収支のマイナスはある程度目をつぶってもらっているそうです。

スタジオ現場の雰囲気

エフエム世田谷の強みについて紹介します。「AIアナウンサー」というパソコンソフトを活用しており、文字情報を日本語や外国語(英語・中国語・韓国語ほか20ヶ国以上)の音声に変換して放送することができます。主に天気や交通情報などの場面で利用されています。この「AIアナウンサー」はリピート機能も付いていて、人間のアナウンサーと違って疲れ知らずで、ずっと話し続けることができます。台風19号の際は、深夜早朝などスタッフの休憩時間や仮眠時間を捻出することにも大変役立ったとのことです。

パソコンによるAIアナウンサー

エフエム世田谷の弱みについて紹介します。世田谷区はベッドタウンで、大きな商業施設が少なく、スポンサー企業を集めにくい傾向があります。区内には一級河川が5本走っており、台風の時はかなり苦労します。

コミュニティFMを設立させる際に参考にしてもらいたい話を3つ教えてもらいました。一つ目は、放送局のカラーをしっかりと持つということです。エフエム世田谷は、開局当時から芸能人や文化人が多く出演するプレミアムな雰囲気をウリにしていました。しかし、収支のバランスを保ち続けることは非常に難しく、今日に至ります。小林課長は、素人さんも自由に参加できるような放送局に転換させたいお考えですが、これまでの経緯やしがらみもあり、なかなか困難であるとのことです。

二つ目は、放送地域のリスナー層や、企業・学校・商店街などを深く知ることです。どんな人が住んでいて、どんな企業や学校・商店街があるかを知れば、リスナーの増加やスポンサー企業の獲得、まちのイベント(お祭りなど)を通じた放送局のPRもできます。

三つ目は、放送法や電波法に詳しい人を多く養成することです。コミュニティ放送局を運営するためには、「第二級陸上特殊無線技士」以上の国家資格を持っている人が複数人必要になります。世田谷サービス公社は、資格取得などの自己啓発を支援する制度があり、エフエム世田谷には、「第一級陸上無線技術士」が1人、「第一級陸上特殊無線技士」が3人いるとのことです。陸上無線技術士のハードルはとても高いのですが、陸上特殊無線技士であれば、難易度はそこまで高くないそうです。小林課長もエフエム世田谷に異動になってから4ヵ月の勉強で資格を取得したとのことでした。

学生が開局するなら必要な事についてもお話をお聞きしました。意識すべき点がいくつかあります。それは、誰に聞いてもらっているのか、リスナ―の気持ちになってしっかり考えることです。慣れていないと自己中心的な番組になりがちで、リスナーを置き去りにした“うちわ受け”な内容になってしまうとのことです。また、広く公共の場に言葉を届けるため、話していいこと、いけないことをしっかりと学ばなければなりません。民間放送連盟のホームページには「放送倫理基本要項」があり、

 放送は、その活動を通じて、福祉の増進、文化の向上、教育・教養の進展、産業・経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命とする。

 放送は、民主主義の精神にのっとり、放送の公共性を重んじ、法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応えて、言論・表現の自由を守る。

 放送は、いまや国民にとって最も身近なメディアであり、その社会的影響力はきわめて大きい。われわれは、このことを自覚し、放送が国民生活、とりわけ児童・青少年および家庭に与える影響を考慮して、新しい世代の育成に貢献するとともに、社会生活に役立つ情報と健全な娯楽を提供し、国民の生活を豊かにするようにつとめる。

 放送は、意見の分かれている問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持しなければならない。

 放送は、適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛けるようつとめる。また、万一、誤った表現があった場合、過ちをあらためることを恐れてはならない。

 報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない。放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる。

 さらに、民間放送の場合は、その経営基盤を支える広告の内容が、真実を伝え、視聴者に役立つものであるように細心の注意をはらうことも、民間放送の視聴者に対する重要な責務である。

とあります。こうした勉強をしっかりとしておいたうえで、番組作りのための幅広い人脈やネットワークが重要とのことでした。

様々なお話をお聞かせ頂き有難うございました。

 

文責:大石翼

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です